知財人材スキル標準 version 2.0  ~ IPランドスケープ ~

知財人材スキル標準 (version 2.0)

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 知財人材スキル標準とは?
 知財人材スキル標準 version 2.0
 IPランドスケープとは?
 知財人材スキル標準 と 知的財産管理技能検定
 国の「オープン&クローズ戦略 」は?
 企業等は独自の戦略を
 「知財人材」というカテゴリーは適切か?
 
国家検定 知財検定1級 合格マニュアル

知財人材スキル標準とは?

 知財人材スキル標準は、企業における知的財産の創造・保護・活用に関する諸機能の発揮に必要とされる個人の知的財産に関する実務能力を明確化・体系化した指標であり、知財人材育成に有用な「ものさし」を提供しようとするものだということです。

 この知財人材スキル標準(知財スキル標準)は、経済産業省・特許庁が策定・公表しています。

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知財人材スキル標準version 2.0について

 現時点では、知財人材スキル標準の改訂版すなわち「version 2.0」が公表されています。
 
 知的財産推進計画が作成されるようになった2005年頃から知財人材のスキルの明確化や知財人材に求められるスキルの基準等の策定が提唱さるようになり、初版(version 1.0)は、2007年に策定されました。
 初版であれば、「知財人材スキル標準ガイドブック―戦略的な知財経営の実践」として製本・販売もされています。

 「version 2.0」では、「知財ポートフォリオ・マネジメント」、「オープン&クローズ戦略」等を新規に設定したということです。
 「IPランドスケープ」なる、最近注目され始めたとされる用語も登場します。

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IPランドスケープとは?

 IPランドスケープとは、自社の知財戦略の策定や適切な知財業務を行うにあたり、自社を取り巻く知的財産の状況を把握・分析する、といったことでしょうか。
 ランドスケープとは景観という意味ですから、特許ランドスケープやIPランドスケープは、特許情報やIP情報を調査・分析して、景観を認識し、経営の進むべき道を決めるために役立てる、ある種のマーケティング・リサーチの手法のことかと思います。
 知的財産を経営に生かす、という観点から、知的財産経営戦略の策定手法やコンセプトという見方をする方もおられるかも知れません。言葉としては新しくても、考え方としては従前からあったものではないかと思います。

 さて、知財人材スキル標準 version 2.0 の取扱説明書には、IPランドスケープの業務内容として、次の事項が挙げられています。

① 知財情報と市場情報を統合した自社分析、競合分析、市場分析
② 企業、技術ごとの知財マップ及び市場ポジションの把握
③ 個別技術・特許の動向把握(例:業界に大きく影響を与えうる先端的な技術の 動向把握と動向に基づいた自社の研究開発戦略に対する提言等)
④ 自社及び競合の状況、技術・知財のライフサイクルを勘案した特許、意匠、商 標、ノウハウ管理を含めた、特許戦略だけに留まらない知財ミックスパッケージ の提案(例:ある製品に対する市場でのポジションの提示、及びポジションを踏 まえた出願およびライセンス戦略の提示等)
⑤ 知財デューデリジェンス
⑥ 潜在顧客の探索を実施し、自社の将来的な市場ポジションを提示する。

知財分析を経営の中枢に 「IPランドスケープ」注目集まる M&A戦略に生かす (日本経済新聞)
 IPランドスケープとは (日本経済新聞)

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知財人材スキル標準 と 知的財産管理技能検定

 この知財人材スキル標準は、国家検定「 知的財産管理技能検定 」の試験範囲やレベルを決めるために用いられているということです。
 知財人材スキル標準 version 2.0が公表されたことで、知財検定の出題範囲が変更となりました。

 なお、知的財産管理技能検定の試験対策としましては、この知財人材スキル標準を読んでおく必要はありません。
 知的財産管理技能検定1級 につきましても、知財人材スキル標準 version 2.0を読めば出題傾向のヒントになるというものではありません。

知財人材スキル標準と知的財産管理技能検定 (知財経営研究社/出版事業のWebサイト)

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国の「オープン&クローズ戦略」は?

 私自身は、政府の「オープン&クローズ戦略」がどのような考えに基づくものであるのか、気になります。

 知財スキル標準は、知的財産の関係者に対して「オープン&クローズ戦略」を策定・実践できる人材育成を呼び掛けるものですので、この知財人材スキル標準を作成・公表した国側にも「オープン&クローズ戦略」を考慮していると思います。

 何をオープンにして、何をクローズにするか、という議論もあったと思います。
 そして、クローズ領域としておくべきことを、どのように判断したのか、気になります。
 その情報を得ることはできませんが、クローズ領域にこそ、競争力の源泉があるように思います。

 「知財人材スキル標準ガイドブック」によって、知財人材育成の手法等に関して、「オープン領域」を広げていることになると思います。 
 これは、我が国の企業等だけでなく、海外の企業や行政機関もアクセスできる情報です。
 オープンにすることの方が我が国の企業等にとって、メリットが大きいと判断されたのだと思いますが、知財スキル標準 version 2.0が力作であるがゆえに、率直なところ気になります。

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企業等は独自の戦略を

 「知財人材スキル標準ガイドブック」の内容は、オープン情報です。

 ボトムアップを図る、または弱点を作らないようにするためには有効かも知れません。

 しかし、知財戦略に関しても、企業等の強みとなる独自性を追求することも大切なことだと思います。
 
 人材育成は、経営戦略のベースの部分です。企業として目指すべき人材育成のあるべき姿やそうした人材を得るための育成方法もまた同様だろうと思います。
 企業は、少々異端ともいえる人材を有していてもいいと思います。

 また、1つの企業における競合が、同業者だけではない時代です。同業者の戦略(のうち、オープンな情報として入手できるもの)を参考にしても、あまり有効なものとはならないかも知れません。

 オープンになった知見を活用しつつも、企業がノウハウ、独自のアイデアとして蓄積している、クローズの領域の知見を活用した強かな戦略を打ち出すことが大切ではないでしょうか。
 クローズの領域たる人材戦略の核心部分は、企業等がそれぞれの経営戦略や制約条件、ヒューマンファクター(人的要因)などを踏まえ、知恵を絞って考え出すほかありません。

 知財人材スキル標準ガイドブックには、「組織デザイン」のパートがあります。

 「組織は戦略に従う」といいますが、「戦略は組織に従う」という見方もあります。
 さらには、「組織も戦略も人材に従う」という要素もあることでしょう。

 経営陣のお人柄、従業員の価値基準など、”ヒューマンファクター”によって、ある企業では優れているとされる戦略が、別の企業では全く機能しないということが起こり得ます。
 従いまして各企業は、その企業ならではの知財人材育成プランを考えなければなりません。
 どこかの企業の優れた取組みを単に採り入れても、必ずしも自社の経営力を向上させることにはなりません。これは知的財産に限ったことではありませんが。

 人材育成、組織開発などは、本当に難しいテーマです。

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知財人材」というカテゴリーは適切か?

 企業は、「知財人材」という表現にはまる人材育成だけでなく、経営を担う人材に対する知財教育の在り方を企業としては考えておくべきだろうと思います。

 企業や団体によっては、「知財人」と表現している場合もあります。

 知財部門の方は、自分は「知財人材」なのだとカテゴライズするよりも、やがては、その企業の経営を担う人材になるのだというマインドを持ってはいかがかと思います。
 俗な言い方をすれば、知財部門の方は、「自分は知財部門出身の社長になるのだ」、という心意気を持ってもいいのではないかと思います。

 あるいは「知財人材」を極めるならば、どの団体・組織等にいっても通用するような人材に自らを育成していくことでしょう。
 「知財人材スキル標準ガイドブック」は、人事担当等よりも、知財部門の方が、自らを育成するために目を通しておいてもいいかも知れません。

 企業にとっては、優秀な知財人材を育成するには時間もお金もかかることです。
 そうした人材は、容易に異動やローテーションなどをさせることはできないことでしょう。
 しかし、知財人材の中において、経営に対する資質やマインドを持つ人材については「知財人材・知財人財」というカテゴリーから開放し、他部門の経験を積ませて経営人材・経営人財に育成していくという考えもあって然るべきでしょう。


国家検定 知財検定1級 合格マニュアル



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