FinTechビジョン の公開

FinTechビジョン(フィンテックビジョン)とは

 経済産業省は、「FinTechビジョン」を作成・公表しました。

 FinTechビジョンとは、FinTech(フィンテック)が経済社会に与えるインパクトや課題、今後の政策の方向性等に関する報告や提言をとりまとめたものです。

 フィンテック(FinTech)とは?
 FinTechとは、Finance(金融)と、Technology(技術)を掛け合わせた言葉です。

 金融機関には、技術革新の波が押し寄せています。
 IoT(Internet of Things)、ブロックチェーン、ビットコイン(Bitcoin)などの仮想通貨、クラウド会計、スマホ決済、人工知能(AI)を活用した金融商品の取引など、このフィンテックと呼ばれる技術が、金融機関の経営に大きなインパクトを及ぼすことは間違いありません。
 すでに電子マネーが私たちの生活に浸透していますが、ここ1、2年のフィンテック(FinTech)の動きは、まさに加速度的です。

 経産省では、昨年(2016年)の7月より「FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合」を開催してきたそうです。

 そこでの議論の成果物として、この「FinTechビジョン」が取りまとめられました。


行政機関の果たす役割

 例えば金融行政を監督する金融庁は、今後はますます、経産省をはじめとする他の行政機関と連携して技術動向に対応していかなければ、監督局としての役割を担うことが難しくなってきました。

 これまでは、 事業性評価ローカルベンチマーク・金融仲介機能のベンチマーク などという要素で、経産省と金融庁の接点がありました。
 今後はそのようなレベルの連携では済まされないでしょう。

 今後は各行政機関がますます密に連携して、我が国の金融サービスの国際競争力を高めるための制度設計を行って頂くことを期待します。

 平成29年5月9日の日経新聞(Web)では、”日銀総裁「銀行はイノベーション取り入れるべき」”という見出しを付けた記事を掲載し、日銀が、我が国の銀行がFinTechなどのイノベーションにによる経営環境の変化に積極的に向き合うべきであるという考えを示したことが紹介されました。


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そのフィンテック、知財紛争への備えは、大丈夫ですか?

 知的財産の関係者の間では、IoT、ビッグデータ、AIの時代における知的財産制度のあり方が大きな関心事となっています。

 データの所有権を巡る議論もますます活発化してくることでしょう。

 今回のFinTechビジョン(フィンテックビジョン)には、一般論というようなレベルですが、データの所有権についても触れられています。
 知的財産に関しては、ほとんど言及がありません。
 
 「オープン&クローズ戦略」の考えに照らせば、このFinTechビジョンは、「オープン」にした情報です。
 したたかに、そして戦略的にオープンにしたものであって欲しいと思います。
 知財の世界では、「こうするとこういう課題にぶつかる」ということに最も早く気づいた者が、その領域で強い特許を取得できることが少なくありません。
 課題についても、うかつにオープンにすべきではないことがあります。
 FinTechビジョンには知的財産対策に関する記述がないのは、意図的なものであればいいと思います。
 そして「クローズ」の領域では、我が国の関係者がはるか先の備えを行っていることを願いたいものです。

 恐らくは、今は他人(特に外国勢)の特許を侵害することになるとも知らずに、開発費と労力を注ぎ込んでいるベンチャー企業がたくさんあることでしょう。

 後ろ盾となる大きな企業が、あるいはシンクタンクの役割を担う機関や企業が、早い段階でそうしたベンチャー企業にコミットすることが必要かも知れません。

 個人的には、FinTechの技術領域は、将来は特許紛争の熾烈な激戦区になると予想します。

 我が国におけるフィンテック関連技術の特許出願状況を特許庁のデータベースでざっと見てみました。
 ブロックチェーンや仮想通貨といったキーワードでヒットする特許出願が急速に増えてきている感があります。
 中国や、韓国系の出願人による出願も散見される状況です。

 なお、以前はそうでもなかったのですが、昨今は日本での特許出願状況を見ているだけでは、世界の特許出願状況は分からなくなりました。
 外国の出願人が、米国や中国では出願していても、日本では出願しないというケースが増えてきているためです。

 フィンテックに関しては、基本特許のようなものは日本でも出願されるでしょうが、周辺特許は、米国などの状況をしっかりと見ていかなければ、特許状況は把握できません。
 フィンテックに関してグローバルでのビジネス展開をお考えの方は、特に注意が必要です。

 中小企業やベンチャー企業に対しては、様々な知財支援策が提供されています。
(詳しくはこちらのページをご覧ください)

 例えば、「中小企業等特許情報分析活用支援事業」があります。
 これは、中小企業にとって費用負担が大きい先行技術文献等の特許情報分析支援を通じ、中小企業等の研究開発戦略の策定、オープン・クローズ戦略等を含む出願戦略の策定及び権利取得可能性判断を包括的に支援するというものです。

 中小企業やベンチャー企業の方は、こうした制度を上手に活用されるといいでしょう。

※いずれ、FinTech市場(フィンテック市場規模など)の調査レポートや、フィンテック関連技術の特許情報サービスなどを提供する事業者が現れると思います。

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国際標準化を視野に

 いまさら国際標準化の重要性については、省略します。
 FinTechビジョンには、国際標準化に関しては言及があります。

 国際標準化に関しては、政府はすぐに「オールジャパン体制」で、と言いたがります。

 しかしそうした既存の考えは、グローバル規模のオープン・イノベーションの時代にはそぐわないかも知れません。
 国内調整をしている間に、世界から置き去りにされてしまう恐れがあります。

 是非とも、将来国際標準を勝ち取る企業グループにおいて、我が国の企業の方々が先導的な役割を担い、収益の果実を手にして頂きたいものです。

 FinTechの開発を進める各企業において、技術の目利き(技術予測)、オープン&クローズ戦略を含む知財戦略、国際標準化戦略、ビジネスモデル構築論、オープン・イノベーションによる研究開発を総合的に指南できる参謀役または参謀チームが存在する(またはそれにアクセスできる)といいのですが。
(FinTechに関しては、私には到底、その役割は務まりませんが・・・)

 企業の皆様には、「FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合」を含む、国主導の諮問機関にも振り回されることなく、うまく使いこなして頂きたいと思います。

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金融業界のビジネスエコシステムが変わる

 先日(4月下旬)、メガバンクに勤務する知人と食事をする機会があり、フィンテックに関しても話題となりました。
 知人いわく、金融業界のビジネスエコシステムが大きく変わるであろうことのインパクトの大きさが読み切れず、不安があるということでした。

 メガバンクの1つである、みずほ銀行は、積極的にフィンテックへの備えをしている様子です。
 みずほ銀行は、「FinTechと<みずほ>」というフィンテック専用のWebサイトを立ち上げて、その取り組みについて情報発信しています。
 そのWebサイトでもコメントされていますが、まさに オープン・イノベーションへの取り組みです。

 すでにメガバンクどうしによる、ビジネスエコシステムの変化への対応競争が始まっています。

 国内外のフィンテック関連ベンチャーが続々と名乗りをあげています。そして、それらを取り込もうと、金融やITの大手企業がチャンスを伺っています。

 数年後には、聞いたことがないような企業が、金融業界を席巻しているかも知れません。
 
 しかし今後は恐らく、フィンテック関連の産業にも様々な規制が課されることでしょう。

 業界ルールやプレイヤーの急激な変化は、既存プレーヤーの利益を脅かすだけでなく、一般市民や社会へ与える不安要素があります。もちろん、犯罪の恐れもあります。
 行政としては、これを無視するわけにはいきません。

 そうした規制が、既存の金融業界の利益の維持を優先することになれば、我が国のフィンテック関連産業は、結局は海外勢が席巻するものとなってしまうのかも知れません。

※5月12日の日経新聞(Web)に次のような記事がありました。歓迎したいと思います。
 「フィンテックなど新事業育成へ規制一時凍結 政府が試行期間」

 私の知人にはフィンテック関連のベンチャー企業を立ち上げた方もおられます。
 テレマティクス保険の開発に関わっている方もおられます。
 是非、大きく花を咲かせて欲しいと思います。


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関連リンク(FinTech・フィンテック)

 FinTechビジョン(FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合 報告)
 FinTechビジョン概要(補足資料)


 産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)(経産省)
 FinTech検討会合 報告書

 フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議(金融庁)
 フィンテックに関する現状と 金融庁における取組み(金融庁)

 FinTechセンター(日本銀行)
 FinTechフォーラム(日本銀行)

 一般社団法人フィンテック協会


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ローカルベンチマークと金融仲介機能のベンチマーク

知財経営研究社

2017年05月18日